働かないおじさんと、簡単に転職を繰り返す人たちを発生させる理由

 支援先の一つ(子供を預かるところ)に上場企業で、部長をしていた方が転職をしてきました。未経験とはいえ、経歴から園長に就任されました。ところが、園長が頑張るほどに、今まで所属していた方々が離反していきます。色々なアドバイスをしましたが、アドバイスに納得せず、一向に良い方向に向かいません。ところが、あることを切っ掛けに突然、園長が理解をしてくれました。

 理解をした切っ掛けは、アドバイスそのものではなく、給与制度についての雑談で、職能給と職務給の違いを話したことにありました。
一般に大企業では、職能給賃金テーブルを基にした給与体系で働くことになります。それに対して、専門職は、年齢や勤続年数ではなく、職務に応じた、給与体系である職務給を基に働くことが多いようです。例えば、皆さんがタクシーに乗ったときに、運転手さんの年齢を確認して、料金が変わることは、当然無いと思います。若い運転手さんでも年配の運転手さんでも同じ料金です。運転手さんの受け取る賃金も一般的に同じ売上なら同じ賃金になります。何処でも同じ賃金なら、同じ会社に長く努める理由は、少なくなります。つまり大企業では、長く努めたくなる理由であり、専門職は、あまり躊躇せずに転職(社)を繰り返す理由です。園長は、少しの不満で退職していく人の心理を理解できなかったのです。

 職能給は、若いときには、賃金を抑えられます。代わりに退職時にまとめて、大きな退職金が支払われます。簡単に職を解かれることもありません。また、職能給は年功序列とも言われる、勤務年数つまり年をとるとともに、賃金が上がっていく制度とも関係しています。勤務年数が長いほど高給取りになっていくわけです。若い頃は、働きに比して安い水準ですが、勤務年数とともに少しずつ、働きに見合った給与になり、最終的には、もらいすぎたように見えることになるのです。企業側も人手不足が続いていて、在職者にできるだけで長く働いてもらいたい時代に良く合っていた制度なのです。また、職能給は、勤続年数とともに能力が上がっていくことを前提にしています。昇格試験に受かって、初めて昇格できる制度のある大企業も多いようです。つまり能力があったら、より高給取りになれる制度です。その時の仕事内容と昇格結果は、直接に関連していません。試験は、能力つまり難しい仕事をこなせるかを見ているだけです。これらのことから、仕事をしていなくても給与の高い、働かないおじさんが発生するわけです。

 働かないおじさんの言い分は、若いときにもらえなかった給与を、少しずつ返してもらっていることになります。また、仕事と給与が見合っていないことは、おじさんに原因はありません。職能給は、働きに応じた給与ではなく、長く努めた結果=能力が上がったとみなす制度なので、仕事内容と給与をリンクさせる必要がありません。見合った仕事を用意しない組織自体が悪いことになります。それに若者も何時か年をとります。その時には、同様に報われるときが来るはずなのです。本来ならば……
 しかしながら、高度成長期を過ぎて、成果に応じた給与体系に変更しようとして、給与体系がおかしくなっているのです。ここに働かない(様に見える)おじさんに対する不満を発生させている原因があります。

 では、職能給であれば、全ての働く人を満足させられるのでしょうか。職能給は、一般的に若いときには、同年代の中で高給取りになることが多いようです。反面ベテランになって見合った職務に就けずに、同じ仕事のままなら昇給しません。より高度かつ成果の上がる仕事内容にならない限り、同じ給与のままです。むしろ、年齢を重ねて無理ができずに、給与が減少することも多いようです。

 つまり、職能給も職務給もそれぞれにメリットとデメリットがあるのです。
経営者の方々が一番悩ましいことは、職能給と職務給の成り立ちをよく理解しないまま、導入したときにおこります。同業他社の制度をそのまま導入して、困ったことになった企業経営者様から、ご相談をいただくことも良くあります。ある企業では、副業主体で、報酬を成果給+職務給で、昇給をしないことにしていました。しかしながら、利益配分は、1/3を直接働く人に、1/3は、サポート人材や経費のために、1/3を企業維持のためにあてる、働く人に有利な制度です。そのことを理解していない、1年以上働いた人から、定期昇給がないことに、強く抗議を受けることになったのです。その抗議をしている方は、一部上場企業の組合員でもありました。制度の違いを理解せず、自身の勤務する上場企業で導入されている職能給制度と異なることに、不満を持っていたようです。経営者も巧く説明できないことで、他の従事者達を巻き込み、不満が広がりはじめていたのです。

そこで、働く人に篤く報いたい経営者本意では無いのですが、勤務年数に応じ昇給をする、職能給制度を一部取り入れることにしました。3年~5年ほどが平均勤続年数であることから、3年程を自動昇給期間としたのです。そして、その制度自体をIT化して自動的に昇給と成果配分を行える仕組みを作りました。 すると、給与の説明時間もいらなくなり、給与処理時間を9割ほど削減して、働く人から不満をいただくこともなくなりました。

 給与制度は、仕事や企業の成り立ちに応じて、決定されます。その時に職務給とするか、職能給とするかで、制度設計を変えなければなりません。それぞれの制度で意味するところや、狙いも異なっています。もし、企業経営者様が同業他社の制度をそのまま取り入れた結果、困ったことがあれば、是非ご相談ください。制度設計から、IT化まで支援致します。そんな外部CIOサービスに興味がある・IT環境整備に困っている、企業ITご担当者さま、経営者様お気軽にお問合せ下さい。ご相談をお待ちしております。

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